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 鮮やかな色彩と奔放な形が、あふれ出るようにキャンバスを躍動する――
 「抽象画の父」と呼ばれるカンディンスキーの作品世界は、魔法みたいな魅力に満ちています。


 でももちろん、もとからそのような作風だったわけではない。
kandsk2.jpg←これは初期の作品。素敵な雰囲気ではあるけれど、具象的な風景画で、まだまだ巨匠の真骨頂には程遠いですよね。


 カンディンスキーが、美の新境地を切り開くきっかけとなった、有名なエピソードがある――。

 あるとき彼は不意に、これまで全く見たこともないような絵を目した。何とも分からない色と形だけが描かれていて、それが素晴らしく神秘的な美しさ放っているのだ。
 「これはすごい絵だぞ!!」と、衝撃的な感動に全身を打たれた。

 ところが、よく見たらそれは、自分の作品が逆さまに置いてあるだけだった…。


 カンディンスキーは気付いた。
 このような絵の表現というのも十分あり得るのだ! 何の絵であるかという「対象としての形」が、実は自分の絵をダメにしているのではないか…。むしろそんなものが無いほうが、純粋に美的な喜びを見いだすことができるはずだ、と――。


 で、話はちょっとずれるのだけど、先日「バイロン・ケイティのワーク」を受ける機会があった。
 このワークは、自分の周りに起きていることに対する「思い込み」を外して、あるがままの現実を愛するというものだ。世界的に有名で、詳しい本もあるし、ネット上からワーク用のテキストなどをダウンロードすることもできる。

 僕も以前に、本やテキストを読むだけ読んで「ああ、なるほど」と感心していた。ところが実際に何人かと一緒に、ちゃんとしたワークとして実践してみると、単に読むのとは比べものにならないほど面白い。


 ワークの中に「置き換え」というプロセスがある。
 その真価は、やはりワークとして取り組んでみないと分からないものだった。簡単に紹介すると――

 例えば、Aさんという知人がいて、その人が自分に対していつも批判的なことばかり口にしているとする。
 そことを自分はとても腹立たしく思っていて、「Aさんは私を批判すべきでない!」と考えている。

 ワークの「置き換え」では、その考えの主語を変えたり、内容を反対にしたりして書き出してみる。
 例えば、
 「私はAさんを批判すべきでない」
 「Aさんは私を批判しても構わない」
 …といった具合。

 ほかにも、「私は私自身を批判すべきでない」「AさんはAさん自身を批判すべきでない」「私は私自身を批判しても構わない」「AさんはAさん自身を批判しても構わない」「私はAさんを批判しても構わない」…といったバリエーションがある。

 単なる記述として読むと、バカバカしい言葉遊びのようにしか思えないでしょう?
 でも、自分が実際に直面していることを書き出してみて、そのうえで1つひとつの言葉について「これはどういうことなのか?」と考えて吟味してみると――、どのパターンも状況として十分にあり得ることだし、考え方として通用する、ということが分かる。

 この世界では、あらゆることが並列的にあり得ることなのだ。
 にもかかわらず自分は、その一部に対して「これは変だ、許せない!」と手前勝手に解釈してしまっている――、という事実に気付かされる。


 これは、カンディンスキーが逆さまの絵を見て、形にとらわれない方が美しい絵画世界を見いだせることに気付いたのと、ちょっと図式が似ているなと思う。

 ワークの「置き換え」によって意味をひっくり返してみると、自分の見方がいかに制限されて凝り固まったものであるかが分かる。
 この思い込みを手放したならば、あとは全方向的に起こっていく現実のダイナミズムを、あるがままに感じるしかない。そうして、その新しい自分の在り方で人生を展開されていく――、というふうになっていくと、素晴らしいなと思っています。


 ただしカンディンスキーは、この気付きによって一気に新たな画境へ突入したわけではなくて、完全に非具象の抽象絵画を描くまでには、10年もの熟成期間を要した。
 ケイティのワークも普通は、天啓に打たれたように世界観が一新するものではなくて、まさに「そこから歩みが始まる」という感じです――。


 ちなみに今回のワークは、僕が何年も愛読しているブログ「ハッピー☆マトリックス」を書いている宍倉朋子さんが主催されたものです。
 声楽家でもある宍倉さんは、今週末の3月9日に東京・新宿区の淀橋教会で行われる、ルネサンス多声音楽のコンサートに出演されるそうです(ご自身のブログの中に案内があります)。僕も癒されに聴きに行きます!


 結びのヒーリングミュージックはPushkar「Simple Living」。シタールの音色がやさしく響くインド音楽です。

  ☞ コメント:8

 
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コメント
343
カンディンスキー…「青騎士」の画家ですね。
名前は知っていたのですが、こんな絵を描くのですね。

以前、カンペンドンクの文章を読んだことがあり
その中に登場していました。
そこから「青い騎士」の絵は難しいと思いこんでしまいました。
でも、現代絵画は難しいです。

345
petite marie様

 初めまして。コメントを有難うございます。

 お詳しいでね! 20世紀初頭の芸術家サークル「青い騎士」を代表する画家です。

 カンディンスキーの絵は、あらゆる解釈を超えて「無意味」であるところが、すごいのではかいかなと思っています。

 カンディンスキーの複製画を買って、何年もずっと上下逆さまに飾り続けていた、という人もいるらしいです。
 ほかの画家では、なかなかないことですよね…。

347
コンニチワ!

ワタシも絵を描いてタイトルをつけようとした時
ちょうど逆さまになっても違和感がない事に気づきました。
それから、逆さまにもタイトルをつけるようになりました。

物事の見方って、自分ではそれ程ではない
感覚なんですけれども、
実際は相当偏っているものなんですね~。

ハッピー☆マトリックスのブログに
お邪魔させていただきました。

Koudai Mitsunaサマ同様に
とっても分かりやすい
お話が沢山ありました。
アリガトウゴザイマシタ~。

348
なりびと様

 こんにちは。
 逆さまの絵にタイトルを付けるって、いいですね!

 そもそも宇宙には上も下もないわけですから。
 「これでいいのだ」の世界ですね…

349
カンディンスキーのエピソードから
私たちの苦しみの原点にまでお話を
進められるMitsunaさんに
脱帽です!!
「ワーク」まったく存じませんでしたので
youtubeで拝見しました。
久しぶりに 読んでみたくなりました。
ご紹介感謝いたしますe-69

351
sti222様

 こんにちは。
 「話を進めている」と解釈いただけると、すごく嬉しいですね! 本当は「話が飛んでいる」だけかもしれないのですが…。

 バイロン・ケイティのワークは、「ザ・ワーク」の異名をとるだけに、さすがの内容です!

423
今日、ケイティのワークをやってみました!
(ダウンロードして)

自分の中の凝り固まった思考がどんどん見えてきて、
「原因はここだったのかぁ~!」と
体の力が抜けていく感覚がありました。

手放して楽になる、という感覚でした。

これからもどんどん繰り返してやってみようと思います。

素晴らしいワークのご紹介をありがとうございました!

427
ヒロ様

 ダウンロードした資料だけできちんとできるって、すごいですね!

 私たちは、自分を苦しめる余計な思いを四六時中抱えて生きているのに、その存在を明確にとらえることって、ワーク抜きにはなかなかできないものですね…。

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プロフィル

Koudai Mitsuna

Author:Koudai Mitsuna
 
光奈 広大(みつな・こうだい)

 20年のあまりのサラリーマン生活を経て、いわゆる「ザ・マネーゲーム」を何とか卒業。今では束縛されない自由な日々を存分に味わっています!

 そうした中で心がけているのは、普通の日常的な行いを通じて、意識の進化を目指す「カルマ・ヨガ」。

 日々の喜びや学び、インスピレーションから得たスピリチュアルな気付きなどをブログで紹介しています。

 妻子と都内在住――。

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